１、異界見聞録、始まる

「異界見聞録、始まる」

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朝倉は、頭を悩ませていた。

「まずいまずいまずい、金が無い」

金が無かった。

ほんと、泣きそうなくらい無かった。

現在の我が藩の経済状況を見てみよう。

資金……４５億。（←まぁそこそこ）

資源……１０万ｔ。（←比較的ヤバイ）

食料……１２万ｔ。（←これも比較的ヤバイ）

燃料……３万ｔ。（←笑い話にもなりません）

娯楽……１３万ｔ。（←比較的ヤバイ）

というわけで、普通ならば、燃料でまずいと思っていると思うのが普通だが…

「まずいまずいまずい、娯楽足りない」

この人にとって、問題は娯楽である。

「帝國宰相と昼休みに殴り合い……ポチ姫とらぶらぶ……ああああ、娯楽が足りん！」

果たして彼らがＡＣＥなのかどうかは置いておいて、要は、小笠原で遊びたいらしいのだ。

燃料での藩国的な危機をとりあえず度外視する、この朝倉景光という人の性格はこうである。

１に面白いこと命。

２に楽しいこと命。

３に誰もやらないような愚行をやること命。

曰く、それに苦労が伴おうと、知った事では無い。

「しかたない…文章書いて書いて書きまくって売るか…ああ、でも普通に書いたんじゃ面白くないよなぁ…」

今日も今日とて、彼は面白いことを求めて（作業的に）死ぬのである。

 

―次の日―

「雄介君どうよ？」

朝倉は、え～藩国のお菓子店『マンジェリエット』を訪ねていた。

「来て突然、脈絡もなく、『どうよ？』って突然言われても、困るんですが。どうしたんですか？」

「ぶっちゃけた話をすると」

「はい」

「君と雪奈ちゃんに、親善大使として、僕と各国を回って欲しい」

「………は？」

「親善大使とは言うけど、要は、藩国経費持ちで、各国を回って旅をするというプランがあるんだけど…どう？　参加しない？」

「………また…唐突な…。今度は何企んでるんですか、あんたは」

「いやいや、ほんと、何も企んでないって。藩国からの、嬉しいプレゼントですってば」

「……ぶっちゃけた話、妙な怪しさが漂っていて怖いんですが」

「ほら、ここに主上（※藩王のこと）の許可書が」

「うっわ…ほんとだ…」

「ねぇ、雪奈ちゃんに、一つ、大きいプレゼント…あげたくない？」

「ぐっ……」

「喜ぶと思うなぁ…」

「…………………………わかりました、わかりましたよ。すごい怪しいですけどこの際仕方ない」

「うんうん。素直が一番。じゃ、明日出発だから！」

「早っ！？」

「んじゃ、また明日迎えに来るよ～」

こうして、朝倉は、見聞録でネタが詰まったら、こいつらラブラブさせとけばいいやーと、投げやりなネタを確保するのであった。

「待って、待って、朝倉さん」

「ん？」

「で、どこ行くんですか？」

「ああ、それはね、そうだなぁ、まずは……」

ニヤリと笑う朝倉。

 

 

「猫だよ」

 

 

朝倉の旅行日記、もといカッコよく言って、異界見聞録、ここに始まる。

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