ふくすいが参加している、アイドレスというゲームで稼ぐためのSSを書きなぐっていくページです。
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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 最終話「滑稽無稽な、一つの物語」 勘違いというものは、大変に強固なものである。 それは時に、鋼の如く強度を得て。 それは時に、風の如く捕まえられず。 それは時に、夢の如く抜け出せない。 嘘は弱いが、勘違いは強い。 これは、奇怪で滑稽無稽な、一つの物語。 盛大な、多くの勘違いから生まれた、一つの物語である。 /*/ 佐倉の、自室。そのドアを壊すかのように激しく開け放つ朝倉。 しかし。 「確保して――――」 確保してやる、と、そう叫ぶ前に、佐倉は一瞬で朝倉を確認すると、窓から飛び降りた。 ちなみに、ここは二階であって、まぁ死にはしないものの、そこそこ躊躇くらいの高さは、勿論ある。 「ああっ、逃げるなっ」 朝倉も、躊躇い無く飛び降りた。 ――かくして、三時間に及ぶ大追跡と大逃亡が開始されたのだが、筆者の気力の関係で、それが終了するまでの伝説的逃亡劇は省かせていただきたく。 …というわけで、三時間後。 「ぜえっ…ぜえっ…もう走れん…死ぬ…」 息も絶え絶えの朝倉――――と、彼に服の袖をしっかり摑まれている、佐倉がいた。 ちなみに、もう国境近くの山中である。 「はぁっ…はぁっ…いい加減…に…しなさ…いよね…!」 と言って、朝倉の手を振りほどく。 そうした拍子に、ゆらりと体がバランスを失い、その場に倒れこむ二人。 最早、両者とも、動く気力なんて残っていなかった。 しばらく、キツすぎて何も言えずにいたが、何とか呼吸を整える佐倉。 「はぁ…あんたね、そんなに楽しみなわけ…?」 朝倉も、同じく呼吸と何とかととのえて、答える。 「あたりまえじゃないですか」 ああ、もう一歩も動きたくない、てか帰らずに寝てしまいたい、などと思いつつ、朝倉はついに目的に辿り着いた達成感で胸が一杯だった。 「あんたも、命かけてるのねぇ…」 「勿論です。趣味は命!」 「………言ってて悲しいとは思わないのね…」 「ふふふ、さあ渡してもらいましょうか…!」 「仕方ない…ここまで食い下がられちゃね…」 佐倉が、ごろりと寝返りを打って、下敷きになっていたらしい“それ“を取り出す。 「はい…今回は私の負けよ…くそう、認めてやるわよ!」 そして――――――朝倉は青ざめた。 「…………え?」 「どしたの?」 「…えと、これは何ですか?」 「…今、追っかけてたものじゃない」 「すいません、状況が飲み込めないです」 「だから、そっちが追いかけてた、世間から見た私の恥ずかしい秘密でしょ? 良かったわね、また一つ悪戯に使えるネタが出来て」 そう言って、佐倉が手に持ってひらひらさせているのはどこからどう見ても―――CDだった。 「つまり。状況を整理すると、ですね?」 「うん」 「僕は、佐倉さんが『童子切安綱と源頼光』を持っているかと思って、追いかけていたわけですよ」 「みたいだね」 「で、佐倉さんは、僕が佐倉さんが、“アニソン好き“というのをどこかで知ったと思って、さらにそれをネタに僕がからかおうとしていると思い、証拠品を抑えられまいと逃げてたわけですよね?」 「そうそう」 「要するに、僕は勘違いで追いかけて、佐倉さんは勘違いで逃げていた、と」 「らしいね」 二人とも、山中で倒れた。 いや、元々倒れていたのだが、精神的にぶっ倒れた。 「何ですかこのオチは…三時間走り回ってこの三流なオチ…」 「あんたが、すごい嬉々とした表情で追いかけてくるからじゃない…」 「佐倉さんが逃げたせいですよ…」 「追いかけられたら逃げるわよ」 「僕だって、逃げられたら追いかけますよ…。てか、じゃあ今日は何で機嫌よかったんですか」 「大好きな作曲家の、新作のCD…まぁこれなんだけど、それが手に入って…」 「…自室で聞いててくださいよ! 藩内ニヤニヤしてうろうろしないでください!」 「だって…夜、皆が寝静まった時じゃないと、バレるかなぁと思って安心して聞けないし…」 「…少なくとも、自室でじっとしてて欲しかったです…」 「どうも、こう、落ち着かなくてね…」 「「はぁ………」」 絶望のため息が、二つ、山に木霊した。 一方その頃、城内。 朝倉の部屋を出る影が、一つ。 「さっき朝倉さんに会った時に、参考資料をお返しすれば良かったですわ」 そう呟くのは、榊遊である。 「でも、何か忙しそうにしてらっしゃいましたし…。借りる時にはお眠りになられていたので、仕方ないと思いましたけれど」 そして、頬に人差し指をあて、不思議そうに首をひねった。 「それにしても、何故あんなにも忙しそうだったのでしょうか…?」 ―――余談であるが、榊の自室のキッチンには、刀を模したきらびやかな和菓子が作られており、翌日準優勝するという快挙を成し遂げるのだが………まぁ、それはまた別のお話である。 これは、奇怪で滑稽無稽な、一つの物語。 盛大な、多くの勘違いから生まれた、一つの物語である。 おしまい、おしまい。 /*/ ※最終話。犯人は遊ちゃんでしたー。もっと意外性を持たせたかったんですが、力量が……。 ※よく読み返してみよう。遊ちゃんだけは本の事を聞いていないのだっ!(ばればれです) ※今週の土日は、『雪の雫 ver2.0』の作業でどこにもいけないかもしれませんが…頑張ったので許してください…。 PR |
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