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最終話「滑稽無稽な、一つの物語」

 

勘違いというものは、大変に強固なものである。

それは時に、鋼の如く強度を得て。

それは時に、風の如く捕まえられず。

それは時に、夢の如く抜け出せない。

嘘は弱いが、勘違いは強い。

 

これは、奇怪で滑稽無稽な、一つの物語。

盛大な、多くの勘違いから生まれた、一つの物語である。



/*/

 

佐倉の、自室。そのドアを壊すかのように激しく開け放つ朝倉。

しかし。

「確保して――――」

確保してやる、と、そう叫ぶ前に、佐倉は一瞬で朝倉を確認すると、窓から飛び降りた。

ちなみに、ここは二階であって、まぁ死にはしないものの、そこそこ躊躇くらいの高さは、勿論ある。

「ああっ、逃げるなっ」

朝倉も、躊躇い無く飛び降りた。

 

――かくして、三時間に及ぶ大追跡と大逃亡が開始されたのだが、筆者の気力の関係で、それが終了するまでの伝説的逃亡劇は省かせていただきたく。

 

…というわけで、三時間後。

「ぜえっ…ぜえっ…もう走れん…死ぬ…」

息も絶え絶えの朝倉――――と、彼に服の袖をしっかり摑まれている、佐倉がいた。

ちなみに、もう国境近くの山中である。

「はぁっ…はぁっ…いい加減…に…しなさ…いよね…!」

と言って、朝倉の手を振りほどく。

そうした拍子に、ゆらりと体がバランスを失い、その場に倒れこむ二人。

最早、両者とも、動く気力なんて残っていなかった。

しばらく、キツすぎて何も言えずにいたが、何とか呼吸を整える佐倉。

「はぁ…あんたね、そんなに楽しみなわけ…?」

朝倉も、同じく呼吸と何とかととのえて、答える。

「あたりまえじゃないですか」

ああ、もう一歩も動きたくない、てか帰らずに寝てしまいたい、などと思いつつ、朝倉はついに目的に辿り着いた達成感で胸が一杯だった。

「あんたも、命かけてるのねぇ…」

「勿論です。趣味は命!」

「………言ってて悲しいとは思わないのね…」

「ふふふ、さあ渡してもらいましょうか…!」

「仕方ない…ここまで食い下がられちゃね…」

佐倉が、ごろりと寝返りを打って、下敷きになっていたらしい“それ“を取り出す。

「はい…今回は私の負けよ…くそう、認めてやるわよ!」

そして――――――朝倉は青ざめた。

「…………え?」

「どしたの?」

「…えと、これは何ですか?」

「…今、追っかけてたものじゃない」

「すいません、状況が飲み込めないです」

「だから、そっちが追いかけてた、世間から見た私の恥ずかしい秘密でしょ? 良かったわね、また一つ悪戯に使えるネタが出来て」

そう言って、佐倉が手に持ってひらひらさせているのはどこからどう見ても―――CDだった。

 

「つまり。状況を整理すると、ですね?」

「うん」

「僕は、佐倉さんが『童子切安綱と源頼光』を持っているかと思って、追いかけていたわけですよ」

「みたいだね」

「で、佐倉さんは、僕が佐倉さんが、“アニソン好き“というのをどこかで知ったと思って、さらにそれをネタに僕がからかおうとしていると思い、証拠品を抑えられまいと逃げてたわけですよね?」

「そうそう」

「要するに、僕は勘違いで追いかけて、佐倉さんは勘違いで逃げていた、と」

「らしいね」

二人とも、山中で倒れた。

いや、元々倒れていたのだが、精神的にぶっ倒れた。

「何ですかこのオチは…三時間走り回ってこの三流なオチ…」

「あんたが、すごい嬉々とした表情で追いかけてくるからじゃない…」

「佐倉さんが逃げたせいですよ…」

「追いかけられたら逃げるわよ」

「僕だって、逃げられたら追いかけますよ…。てか、じゃあ今日は何で機嫌よかったんですか」

「大好きな作曲家の、新作のCD…まぁこれなんだけど、それが手に入って…」

「…自室で聞いててくださいよ! 藩内ニヤニヤしてうろうろしないでください!」

「だって…夜、皆が寝静まった時じゃないと、バレるかなぁと思って安心して聞けないし…」

「…少なくとも、自室でじっとしてて欲しかったです…」

「どうも、こう、落ち着かなくてね…」

 

「「はぁ………」」

 

絶望のため息が、二つ、山に木霊した。

 

 

一方その頃、城内。

朝倉の部屋を出る影が、一つ。

「さっき朝倉さんに会った時に、参考資料をお返しすれば良かったですわ」

そう呟くのは、榊遊である。

「でも、何か忙しそうにしてらっしゃいましたし…。借りる時にはお眠りになられていたので、仕方ないと思いましたけれど」

そして、頬に人差し指をあて、不思議そうに首をひねった。

「それにしても、何故あんなにも忙しそうだったのでしょうか…?」

―――余談であるが、榊の自室のキッチンには、刀を模したきらびやかな和菓子が作られており、翌日準優勝するという快挙を成し遂げるのだが………まぁ、それはまた別のお話である。

 

 

これは、奇怪で滑稽無稽な、一つの物語。

盛大な、多くの勘違いから生まれた、一つの物語である。

 

おしまい、おしまい。

 

/*/

※最終話。犯人は遊ちゃんでしたー。もっと意外性を持たせたかったんですが、力量が……。

※よく読み返してみよう。遊ちゃんだけは本の事を聞いていないのだっ!(ばればれです)

※今週の土日は、『雪の雫 ver2.0』の作業でどこにもいけないかもしれませんが…頑張ったので許してください…。

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