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第一話「オープニング」

 

それは、くつくつと笑った。

成功した。我こそは勇者。成功した!

手には、積年の夢が、握られている。

ひとしきり笑った後、周りの目を気にした。幸い、誰もいない。しかし、こんな所を見られるのは非常にまずい。その事態は、この藩国で生きる上で、榊遊に見つかって、無邪気に絡まれた後に事件に否応なしにに巻き込まれるという事態と同等に最悪の展開である。

持っていたものを、懐に入れた。

そして、歩き出す。

我が手に栄光を!

 

奇怪で滑稽無稽な幕が、今、上がる。



/*/

 

朝だ。

天気も良く、気温も北国としては中々。

朝倉は、ううむ、まさに休日日和と布団の中で唸ったあと、休日を謳歌するための、愛すべき名作を早速読もうと、身を起こした。

この“愛すべき名作”というのは、本と刀が大好きな朝倉が、追い求めて追い求めて、やっと入手した、「童子切安綱と源頼光」という、著者不明の胡散臭い本である。朝倉、源頼光という武将の伝説と、その刀については目が無かった。まぁ、よく分からない読者の方々は、何やら胡散臭い古ぼけた、日本刀についての本と解釈してもらえれば、それで良いだろう。

「くふふ…休日のお楽しみのためにとってたんだよね…くふふ…」

怪しさ抜群である。

つい先週は冒険でそれどころでは無かったため、入手したのは二週間ほど前なのだが、読めていなかった。

彼は、布団から出て、本を大切に置いてある、机に向かう。

「……………え?」

そして、ぽかんとした。

「……………ん?」

目を凝らしてみる。

しかし、何度見ても、昨日までそこにあった本が、消えていた。

「うわああああああああああ!!!」

藩の城に、絶叫が木霊した。

 

 

悶絶して倒れ、その後七転び八起きしたが、七転八倒の勢いで精神的にどん底になり、、その後また七転び八起き、海より深く山より高い葛藤を繰り広げた朝倉は、ついに呻きつつ立ち上がった。

「ぐぅ…どこだ…誰が持って行った」

既に部屋は調べつくしている。勿論、無我夢中で探していたので、部屋の中は凄まじい事になっているのは言うまでもない。

「あれ…高かったんだぞ…25万わんわんもしたんだぞ…」

実は、ここのところで出た給料、全部つぎ込んでいたりする。現在、素晴らしく財布の中はからっぽになっているのである。

朝倉は、さっきまで重力が変化したのではと思うほど重たかった体が、今度は、内に秘めた力によって、燃えるように、力がみなぎるように、感じられていた。

「許すまじ……必ずや奪回!我が手に栄光を!」

そう叫ぶと、彼は勢い良く扉を開け、戦場に出て行くのであった。

 

/*/

 

※連続短編集でもやろうかと思います。頑張って毎日更新!

※四日~一週間ほどの更新で終了します。

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